コラム | INSIGHT

  • COLUMN

BLOCKS IKEBUKURO 開発ストーリー 難しい土地を高収益にする

2025.05.30

池袋駅から徒歩7分、副都心線出口から4分。賑やかな街の喧騒から少し奥まった場所にあるL字型の旗竿地。一見すると開発が難しそうなこの土地こそが、BLOCKS IKEBUKUROの構想の始まりでした。

逆境を好機に変える設計力

この旗竿地を仕入れることができたのは、その特殊な形状ゆえでした。共同住宅のデベロッパーにとっては、東京の建築条例で死角となるエリアに建築ができず、十分な容積を消化できないというデメリットがありました。一方、事務所ビルであれば建築は可能です。しかし、検証したところ、特殊な形状から杭の施工が困難であり、また柱がレイアウトの大きな障壁となり、貸出面積(レンタブル比)を十分に確保できないという課題がありました。

この難題を解決に導いたのが、構造設計士の「ベタ基礎の壁式構造」という提案でした。杭も柱も不要となるこの画期的な構造は、貸床面積を飛躍的に向上させ、さらにレイアウトの自由度も格段に高めることを可能にしました。また、細い形状により全貸室に窓を設けることができ、一見すると不利な土地条件が、逆に唯一無二の空間を生み出す強みへと転じたのです。

「席単価」と「坪単価」の絶妙なバランス

収益性を追求する上で、私たちは「席単価」と「坪単価」のバランスに注力しました。池袋には席単価を低く抑えたシェアオフィスが多く、その中で競争力を保ちつつも、高い収益性を確保する必要がありました。そこで設計段階から、席単価を相場レンジに抑えながら、坪単価を最大限に高めるという、一見相反する目標を両立させる工夫を凝らしました。これは空間利用効率性を高めることで、安価な賃料でありながらも高い投資効率を実現するという、まさに我々が目指すものでした。形状により、相場より土地が安く仕入れられていることで、さらに高い収益性になっていることは言うまでもありません。

入居者が生み出す不動産の価値:30代を惹きつけるデザイン戦略

不動産の価値は入居者属性も大きく影響します。オープンはスタートラインであり、稼働率が上がり、契約更新のタイミングでいかに賃料を上げていくか。そのためには、「どのような人が入居しているか」というブランディング要素が極めて重要になります。

単に「席単価を抑える」ことで間口を広げ、誰でも入ってくるものでは達成できず、明確なターゲット設定が必要です。例えば、「30歳の年収500万円」と「50歳の年収500万円」では、同じ所得でもその属性は全く異なります。私たちは、BLOCKS IKEBUKUROに入って欲しい対象を「若く、これから所得が上がっていく可能性を秘めた30代のビジネスパーソン」に据えました。対象層のミドルアッパーを狙うことで、入居することへのステイタス性、高めの賃料への納得感を醸成するのが狙いです。

もちろん、募集時に年齢制限を設けることはできません。そこで、ファッション業界でブランディングのために服装やデザインで体型や年齢を絞り込む手法をBLOCKS IKEBUKUROでも取り入れました。具体的には、全体的に明るく、売れっ子の若手アーティストとコラボレーションする等、30代がおしゃれだと感じるデザイン感度を追求する一方で、年齢層が高い方々には「これは自分向きではないな」と感じさせるような意図的な空間デザインによるターゲットフィルタリングを施しました。池袋という巨大市場だからこそ、市場細分化しても十分なパイがあり、ターゲティングによる価値をより引き出すことができます。

“働く”をテーマにした場合に様々な見方をされることもある独特のエリアですが、建築・インテリアのデザインとマーケティングの活用より、若く、ファッション感度高いミッドアッパークラスのターゲット層が集まる場所を創っていくことで、このエリア評価に対して寄与したいと考えています。実際にオープン前の先行内覧会にて「BLOCKSのことは前から知っていて、近くにできたらいいのになと思っていたら、池袋にできると知ってすぐ予約しました」という方もいらっしゃいました。池袋は再開発も進み、ますます注目されるエリアになってきています。

空間を彩る「音」のデザイン:AISOとの出会い

空間を構成する上で「音」の力はとても大きいものです。しかし、一般的なオフィスビルでは非常放送用の安価なスピーカーが設置されているのが大半で、音楽を流すことは想定されていません。既存ビルからのコンバージョンでは難しかったこの要素も、新たに開発できることから私たちは音響空間を設計する専門業者に依頼し、ビル全体を音響空間としてデザインしました。音圧の均一性、音質はもちろん、エリアごと、トイレやエレベーターまでも用途区分けされた「音楽空間」を作りました。

そして、どのような音楽を流すか。ソニックブランディング、つまり音でブランドを表現し、その場への愛着を育むことができないか。無印良品などがその代表例ですが、オフィスのように滞在時間が長い空間では、決まった楽曲を流し続けるとユーザーが聞き飽き、ストレスになりかねません。

良い解決案がないかと探していたところ「AISO」と出会いました。AISOはその空間に適した200〜300個もの音源バンクをまず作り、プログラムが自動的に音楽バンクを組み合わせセッションさせることで半永久的に新しい音楽を生成し続ける、という画期的な音楽デバイスです。開発者ですら予測できない音を創造するというAISOは、ブランドの世界観を重視する国内の店舗やホテル、カフェ、企業の本社オフィスなどで導入されはじめており、BLOCKS IKEBUKUROにおいても独自の雰囲気を作ってくれました。

上記以外にもBLOCKS IKEBUKUROの企画構想から建設、そして運営に至るまでの数々の課題解決、工夫がありました。

このプロジェクトを支え、共に挑戦してくださったすべての関係者の皆様に、この場を借りて、心より感謝申し上げます。

関連ページ

次のコラムを読む